2006年08月03日

(-.-) ちょっと良いお話2 (-.-)

(-.-) ちょっと良いお話2 (-.-)

今日は、「ちょっと良いお話」ですぅ。(-.-)

この写真も、素材屋さんからお借りしたものです。
しばらくは、お借りしたものになりますぅ。

雨音の中

 雨音が激しくなってきた。
 地面を叩付ける雨音は忌まわしい想い出を呼び覚ます。

 薄暗い部屋の中で、私はあの人の帰りを待ち続ける。
 一週間ぶりにあの人がここへ帰ってくる日。
 私は淋しさと不安を紛らわしながら、雨音の中、あの人を想う。
 (どうして貴方のような人を好きになったのかしら。誰かに似ているから?)

 雨はどんどん激しさを増してくる。
 窓や屋根が雨に軋む。
 その音が私をゆっくりと取巻き、あの日の事を嫌でも想い出させる。
 蒼い樹が雨に打たれて柳のように滴れて、窓越しの風景は白い線に被われていた。

 『雨がひどいわね。父さんの現場は大丈夫かしらね?』
 『川が増水して今日は戻れないって。さっき父さんから電話があったよ』
 『そう……』
 母は外を見つめて心配そうな顔をしていた。

 その夜、父さんの会社から電話が入った。
 母さんは慌てて外へ飛びだし、残された私と妹は二人の帰りをじっと待つしかなかった。
 不安げな顔で、お姉ちゃん、と泣き出す妹を私は雨音の中で抱きしめた。
 不安が大きく襲いかかり自分の方が潰れそうだった。
 妹の握り絞めた私の腕には小さな紅い花のような不安の痕が残っていた。

 父さんは二日後に河口付近の砂岸で発見された。
 母の喪服と妹のセーラー服が、今でも私の胸に黒く染め込まれている。

 父さんの最後の言葉が耳から離れない。
 『心配そうな声をだすな』
 外の雨は脈を打つように降り続く。
 その音はあの日の雨音のような気がした。
 携帯のメロディが雨音に消えそうになりながら唸る。
 私はその光をゆっくりと握りしめて番号を見た。
 見慣れたその番号はほんの一時だが私の苦しみを和らげる。

 「もしもし、貴方」
 「ごめん、この雨だろ、現場がてこずっててさ。
  帰りが遅くなるかもしれないけど今日必ず帰るからな。
   飯の用意はしといてくれよ」
 「う、うん……」
 「ハハハ、心配そうな声をだすな。じゃあな!」
 電話は切れた。

 また雨音だけが、ずしんと私の心にのしかかる。
 振り切れない不安の中を私は待ち続ける。
 あの時の妹の握った腕が少しだけ疼く。
 しかし、そこにはあの紅い花の痕は残っていなかった。

 「心配なんかしないよ、きっと戻ってくるよね。そうでしょ?」
 私は窓越しに雨を睨み付ける。
 その白く輝く線の中、胸元で小さく両手を握締めた。
 雨音の中父さんの声が蘇る。
 誰かに似た貴方の声が聞える。
 『心配そうな声を……』
 「だすな」
 私はそう呟いて、雨で繋がった空を見上げる。
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     「ただいまぁ~~~ 帰ったぞ!」




何やら何度か読んでいう内に、心にずしんときましたぁ。_(._.)_

今日はとても疲れたぁ。

もう寝よぉ~、明日の朝、行かなければいけないところがあるからぁ~。(-_-)zzz


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Posted by たえちゃん at 22:01│Comments(0)ちょっと良いお話
 
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