2006年08月08日

(-.-) ちょっと良いお話6 (-.-)

(-.-) ちょっと良いお話6 (-.-)

ちょっと良いお話ですぅ。

写真は、星空ですねぇ。

ちょっと、解りにくいかも、だけどぉ~。(-.-)

ネガイボシ


 今夜は50年ぶりの流星群です、とラジオが告げた。

 私はこうしちゃいられないと思い、上着を手に取り、外へ飛び出した。
 風が寒い。 
 この辺りの空は澄んでいて、天体観測にはもってこいだ。

 私はお気に入りの空色の自転車にまたがると、勢いよくこぎだした。
 空と街がいっぱいに見渡せる、最高の場所を私は知っているのだ。
 胸に沸き起こる期待が、私の息をピンポン玉みたいに弾ませた。

 願い事は何にしよう。
 目的地まであと半分というところで、私はピカピカ光る小さなものを目にした。
 その弱々しい光は、電灯の光に飲み込まれそうになりながらも、
  精一杯その存在を私にアピールしてきた。

 小さな、星の欠片(かけら)だった。 

 「ワタシヲ、ハコンデクダサイ、アソコノ、タカダイマデ、オネガイシマス」 
  今にも電池が切れそうなラジオみたいな声で、星の欠片はそう言った。

 私は「いいよ」と言うと、その星をハンカチに包んで、再び自転車に飛び乗った。 
 「ねぇ、どうしてあんな所に落ちてたの?」と私はポケットの中に向かって訊ねた。

 「モトモト、カラダガ、ヨワイノデス」 星の光がポケットから滲み出している。
 「で、高台まであなたを運んで、それからどうすればいいの」 
 「コンヤノ、リュウセイグンニ、ワタシヲ、ノセテクダサイ」 

 私は「流星群に乗せて」と言われても、やり方が全くわからなかった。
 けれど、星の光が言葉を発するたびに弱々しくなっていったので、
  とにかく高台までの道を急いだ。
 しかし、次第に光は弱くなり、ついにはポケットの間から見えるくらいの光になってしまった。 

 私は焦った。 

 近いと思っていた高台がやけに遠い。
 足はすでにパンパンに張っている。 
 光はさらに弱くなる。 
 私の息がスーパーボールのように弾む。
 
 「ねぇ、大丈夫!?」
  「ハ、イ」 ペダルを踏み込む。

 思い切り。 
 足が弾け飛びそうになる。 
 光が消えかかる。 
 高台が見えた。 
 自転車ごと倒れこむ。
 
 震える足で何とか立ち上がり、ポケットに問い掛ける。 
 返事がこない。
 
 私はハンカチを取り出して、空に高く、高くかざした。 
 私の息がぴたりと止まる。
 
 無数の星が空を駆けていく。 
 床の上に散らばったビーズのように、空に星がばらまかれる。 

 一瞬だった。 

 流星群。 

 再び私の息が激しく弾み始めたとき、空からふわりと私の耳に届いた。
 「アリガトウ」 今度はゆっくりお話ししたいな。

 温かい紅茶でも飲みながら。 どうか、50年後にまた会えますように。




たまには、夜の星空を見上げてみましょう。

そして、お願い事をして見ましょう。

きっと良い事が、って思ってねぇ。


同じカテゴリー(ちょっと良いお話)の記事

Posted by たえちゃん at 00:12│Comments(0)ちょっと良いお話
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。