2006年08月18日

(-.-) ちょっと良いお話10 (-.-)

(-.-) ちょっと良いお話10 (-.-)

ちょっと良いお話も、もう10話ですぅ。

まだまだ、続くぅ~。

写真は、カチカチ山の狸さんと兎さん。

竹薮の約束


 「あ、狸!」よっこの声にみんなはいっせいに振り返った。

 見ると、道路の真中に、柴犬位の動物が、硬直して私達を見ていた。
 狸を見たのは初めてで、私一人だったらそれが狸だということは分からなかったかもしれない。
 狸は暫く固まっていたが、急に走り出し、道を横切り竹薮の中に駆け込んでいった。

 「ねえ、追いかけようよ」美香が興奮気味に言った。

 ランドセルは邪魔なので道の脇に隠し、私達は竹薮の中に踏み込んだ。
 竹薮の脇の道は毎日通っているけれど、竹薮の中に入るのは初めてで、なんだかわくわくした。
 落ち葉のつんとくる匂いが、いっそう気持ちを盛り上げる。
 美香と二人でくすくすふざけていると、フミちゃんが「静かに!」と言った。
 はっとして耳を澄ますと、遠くで微かな音が聞こえた。

 「あっちかな」よっこが指した方にみんなが進もうとしたその時、
  すぐ近くでがさがさという音が聞こえた。
 驚いて振り返ると、爺さんが一人立っていた。
 「お前達何をしている!」怒鳴られてびくびくしながら、私達は狸を追いかけてきたことを伝えた。
 狸と聞いて爺さんも驚いたようだ。
 「狸か、珍しい。昔はそこいら中で見かけたものだが」そして、顔を和らげた。
 「怒ってすまんかった。てっきり、竹の子でも盗みに来たのかと思ったよ」
 「竹の子?」
 「ああ、最近多いからな」そう言って爺さんはもとの道を戻ろうとした。

 「そうそう」爺さんが振り返った。

 「狸のことだが、そっとしておいてやってくれんかね」爺さんは少し寂しげに言った。
 「奴らも、住む所を追われて窮屈な思いをしているだろう。
  せめて、この林で静かに暮らさせてやってはくれんかね」
 「狸のプライバシーの尊重だね」美香がにっと笑うと、爺さんも笑って、
 「そうそう、プライバシーだ」と言うと、落ち葉を踏み分けて去って行った。
 私達もなんだか気をそがれて、竹薮を後にした。

 「あーあ、残念」
 「でも、面白かったね」みんなが探検の感想を言い合う中、私は呟いた。

 「狸が化けるって本当だったね」

 「え?」
 「絵理、何か言った?」
 「ううん、何でもない」 そうだ、私だけの秘密にしよう。
 みんなにはなぜだか見えなかったようだが、爺さんの後姿を見て、私は腰が抜けそうになった。

 去って行く爺さんのお尻には、立派なお尻尾がついていた。

 思わず笑いが零れる。
 狸との約束通り、あの竹薮のことは忘れよう。
 彼らの静かな暮らしが、もう邪魔されることのありませんように。




うちのご近所にも時々、狸さんが現れるらしい。

母が早朝暗いうちにゴミを出しに行くと、目が合うらしい。

そうするといつも決まって狸は、「じろじろ、見るんじゃねえ~」って。

そう言って、藪の中へ一目散。

狸さんの方が、たくましく生きてるねぇ~。 (-.-)


同じカテゴリー(ちょっと良いお話)の記事

Posted by たえちゃん at 02:58│Comments(0)ちょっと良いお話
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。